DIARY

写メ日記

セラピストたちの日々の様子やお客様へのメッセージをお届けします。

リョウ

お問い合わせありがとうございます

こんにちは、リョウです。

ご予約についてお問い合わせをいただいていると伺いました。
気にかけてくださり、本当にありがとうございます。

現在はまだ、ご予約に対応できる状況ではなく、申し訳ありません。

復帰できるタイミングが決まりましたら、こちらの日記で改めてお知らせします。

その際に、また思い出していただけたら嬉しいです。

リョウ
瑞希

【方舟】

『方舟』

夕木春央


クローズドサークルの傑作

衝撃のラスト一行

との評価



極限状態に閉じ込められた人々が、生き残るために犯人を見つけなければならないという異色の本格ミステリー。

張り巡らされた伏線と息詰まる心理戦が最後まで読者を翻弄し、ラストには思わず言葉を失う衝撃が待っています。

ネタバレ厳禁でおすすめしたい一冊。

瑞希

デビュー!!

初めまして!

数あるセラピストの中から僕まで辿り着いて頂きありがとうございます!


この度LEAD大阪でデビューさせて頂くことになりました瑞希(みずき)です。


お客様一人一人としっかり向き合い

満足頂けることを心掛けてます🎵


あなたからのご予約心からお待ちしてます

デビュー!!
蒼人

【深夜喫茶アオト】第四夜 また来てもいいですか

※これは、完全なフィクションの短編小説です。


実在のお客様・店舗・出来事とは関係ありません。


眠れない夜に、少しだけ読んでもらえたら嬉しいです。


【深夜喫茶アオト】


第四夜 また来てもいいですか


その夜、喫茶アオトには、珍しく誰も来なかった。


金曜日の二十三時。


看板に灯りを入れ、豆を挽き、湯を沸かす。


いつものようにカウンターを拭き、角砂糖の瓶を満たし、冷蔵ケースの中に小さなケーキを並べた。


それでも、扉のベルは鳴らなかった。


雨も降っていない。


終電が止まったわけでもない。


街には人の気配があるのに、この店だけが夜から取り残されたように静かだった。


午前零時。


午前一時。


時計の針が進むたび、店内に小さな音が落ちる。


誰も来ない夜は嫌いではない。


誰にも話しかけられず、誰の話も聞かず、珈琲の香りだけが漂う時間も悪くない。


それでも、扉のほうを何度も見てしまう。


誰かを待っているときの癖だった。


午前二時を少し過ぎたころ。


扉の向こうで、人影が止まった。


すぐには入ってこない。


木の扉に映った影が、近づいたり離れたりしている。


入るかどうか迷っているらしい。


俺は声をかけずに待った。


喫茶アオトでは、扉を開けるタイミングも、お客様が決める。


しばらくして、ベルが小さく鳴った。


「まだ、やってますか」


その声を聞いて、俺は顔を上げた。


黒いコート。


きれいに巻かれた髪。


両手で大切そうに抱えた、小さな白い箱。


一か月ほど前、誕生日の夜にこの店を訪れた女性だった。


「もちろん。始発まで開いています」


彼女は少し安心したように笑った。


「覚えてますか」


「ショートケーキの方ですよね」


「名前じゃなくて、ケーキで覚えてるんですね」


「お名前も覚えています」


俺が彼女の名前を呼ぶと、少し驚いた顔をした。


それから、照れたように目を伏せる。


「覚えてたんだ」


「忘れませんよ」


彼女は前と同じ、カウンターのいちばん端に座った。


白い箱を隣の席に置く。


「今日は、誕生日ではないんです」


「見ればわかります」


「どうしてですか」


「誕生日の人にしては、少し堂々としています」


「前はそんなに挙動不審でした?」


「少しだけ」


「恥ずかしい」


そう言って笑う顔は、初めて来た夜よりも柔らかかった。


目元に疲れは残っている。


それでも、誰にも気づかれないように必死で隠している感じはしなかった。


「何にしますか」


「ミルクティーをお願いします」


「甘めで?」


彼女は少し考えた。


「今日は、普通で」


「承知しました」


鍋にミルクを注ぐ。


火を弱くして、茶葉を量る。


彼女はその様子を眺めながら、白い箱を指で軽く叩いていた。


「今日は、どうしてここへ?」


俺が尋ねると、彼女は少し困った顔をした。


「それを考えてたんです」


「はい」


「何かあったわけじゃないんです」


「それはよかったです」


「仕事も普通でした。上司にはちょっと腹が立ったけど、いつものことだし。家族とも喧嘩してないし、失恋もしてない」


「はい」


「眠れないわけでもないんです」


「眠れそうですか」


「たぶん、家に帰ってベッドに入ったら、すぐ眠れると思います」


俺はミルクティーをカップに注いだ。


彼女の前に置く。


「では、なぜ?」


彼女は湯気の向こうから俺を見た。


「来ちゃだめでしたか」


「そんなことは言っていません」


「でも、この店って、眠れない人が来る場所でしょう?」


「看板には何も書いていませんよ」


「前に言ってました。眠れない夜にどうぞ、って」


「眠れる人はお断り、とは言っていません」


彼女はカップを両手で包んだ。


一口飲んで、小さく息を吐く。


「今日、仕事帰りにケーキ屋さんの前を通ったんです」


彼女は隣の白い箱を見た。


「前にここで食べたのと同じ、いちごのショートケーキが並んでいて」


「買ったんですね」


「はい。二つ」


「二つ?」


「一人で二つ食べるのは、さすがに寂しいので」


彼女は箱をカウンターに置き、こちらへ押した。


「一緒に食べてもらおうと思って」


「それで来たんですか」


「たぶん」


俺は箱を開けた。


いちごがひとつずつ乗った、小さなショートケーキが二つ並んでいる。


以前この店で出したものより、少し立派だった。


「今日は、ろうそくはありません」


「誕生日ではありませんからね」


「願いごともしません」


「しなくても大丈夫です」


「歌も歌わないでください」


「前も歌っていません」


「でも、歌いそうな顔をしてました」


「どんな顔ですか」


彼女は笑った。


俺はケーキを皿に移し、フォークを二本置いた。


カウンターを挟んで、一緒に食べる。


客が持ってきたケーキを店主が食べることが正しいのかは知らない。


けれど、深夜喫茶には、たまにメニューにない時間がある。


「おいしいですね」


俺が言うと、彼女は少し満足そうにうなずいた。


「自分で買ったケーキなのに、誰かがおいしいって言ってくれると嬉しいですね」


「一人で食べるのとは違いますか」


「違います」


「味が?」


「気分が」


彼女はフォークでいちごを半分に切った。


「前にここで、来年の誕生日は自分を雑に扱わないようにしたいって言ったの、覚えてますか」


「覚えています」


「あれから、少し練習してるんです」


「どんな練習ですか」


「疲れた日は、お惣菜を買う」


「大切ですね」


「残業を一回だけ断りました」


「それは勇気がいりますね」


「欲しかった靴も買いました」


「履いていますか」


彼女はカウンターの下で、片足を少し持ち上げた。


黒い革の靴。


小さな飾りがついている。


「似合っています」


「ありがとうございます」


彼女は嬉しそうに足を下ろした。


「それから、この前、友達に言ったんです」


「何を?」


「たまに寂しいって」


「言えましたか」


「はい」


彼女は少し笑う。


「そしたら友達も、『私も』って言ったんです」


「そうでしたか」


「ずっと、みんな平気なんだと思ってました。寂しいのは私だけで、私だけが大人になりきれてないんだと思ってた」


「案外、みんな上手に隠しています」


「あなたも?」


その質問に、俺は少しだけ考えた。


「俺もです」


「店主なのに?」


「店主でも」


「誰かの話を聞く人なのに?」


「聞く人にも、話したい夜はあります」


彼女は少し驚いたように俺を見た。


それから、ケーキを一口食べる。


「今日は、話しますか」


「何をですか」


「寂しいこと」


今度は俺が笑った。


「今日は、お客様の番では?」


「交代制じゃないでしょう」


「違いますね」


「話してもいいですよ」


彼女は何気なく言った。


特別なことをしているつもりはないようだった。


その言葉が、思っていたよりも温かかった。


この店では、いつも俺が聞く側だった。


泣きたい人の話を聞く。


強がる人の荷物を預かる。


言葉にならない気持ちが形になるまで待つ。


それが店主の仕事だと思っていた。


けれど、誰かを受け止めることと、自分が何も感じないことは違う。


店の灯りを消したあと、誰もいないカウンターを見て、少し寂しくなる夜もある。


「今日は、誰も来ないかもしれないと思っていました」


俺は言った。


「寂しかったですか」


「少しだけ」


「私が来て、よかったですか」


「はい」


彼女は満足そうにうなずいた。


「じゃあ、今日はそれでいいです」


「何がですか」


「私が来た理由」


彼女はミルクティーを飲んだ。


「眠れなかったからでも、悲しかったからでもなくて」


少し照れたように、カップの縁を指でなぞる。


「あなたに会いたかったから来た。それでいいですか」


「十分です」


「迷惑じゃないですか」


「迷惑なら、ケーキを半分も食べません」


皿の上には、もうクリームが少し残っているだけだった。


彼女が笑う。


「本当に食べましたね」


「甘いものは好きです」


「初めて知りました」


「聞かれなかったので」


「ほかにも、知らないことがありそう」


「たくさんあります」


「少しずつ聞いてもいいですか」


「営業時間内なら」


「店主として?」


「それ以外だと困りますか」


彼女は返事をしなかった。


ただ、少しだけ頬を赤くして、ミルクティーを飲んだ。


時計が午前三時を知らせる。


外を走る車の音が、少しずつ減っていった。


彼女は仕事の話をした。


新しく入った後輩が、思っていたよりも面白い人だったこと。


買った靴で歩いたら、少し足が痛くなったこと。


友達と来月、温泉に行く約束をしたこと。


何かを解決するための話ではない。


慰める必要も、正しい答えを探す必要もない。


ただ、今日あったことを誰かに話す。


それだけの時間だった。


深夜の喫茶店には、こういう夜も必要なのかもしれない。


つらい人だけが休める場所ではなくていい。


泣いている人だけが優しくされる場所でなくていい。


元気なときに来てもいい。


何も起きなかった日に、誰かの顔を見たくなって来てもいい。


彼女が席を立ったころ、窓の外が少しだけ明るくなっていた。


「今日は眠れそうですか」


俺が尋ねると、彼女はコートを着ながら答えた。


「よく眠れそうです」


「それはよかった」


「じゃあ、もう来る理由がなくなりますね」


「理由が必要ですか」


彼女は扉の前で振り返った。


「また来てもいいですか」


「もちろん」


「誕生日じゃなくても?」


「はい」


「寂しくなくても?」


「はい」


「眠れない夜じゃなくても?」


「ここが開いている時間なら」


彼女は少し考えてから言った。


「じゃあ、また会いたくなった夜に」


「お待ちしています」


扉のベルが鳴る。


彼女は朝の街へ歩いていった。


カウンターには、空になったカップが二つ。


ケーキの入っていた白い箱。


そして、使わなかった紙ナプキンが一枚。


泣かなかった夜のあとにも、片づけるものはちゃんと残る。


俺はカップを洗い、店内の灯りを少し落とした。


もうすぐ始発が動き出す。


喫茶アオトには、眠れない人が来る。


寂しい人が来る。


泣けない人や、強がることに疲れた人も来る。


でも、それだけではない。


話したいことがない人も。


元気な人も。


ただ誰かと甘いものを半分ずつ食べたい人も。


来る理由は、自分で決めていい。


理由なんてなくてもいい。


深夜喫茶アオトは、今夜も始発まで開いています。


また会いたくなった夜に、どうぞ。


蒼人

【深夜喫茶アオト】第三夜 泣けない夜のミルクティー

※これは完全なフィクションの短編小説です。


実在のお客様・店舗・出来事とは関係ありません。


眠れない夜に、少しだけ読んでもらえたら嬉しいです。


【深夜喫茶アオト】

第三夜 泣けない夜のミルクティー


深夜一時を過ぎたころ、喫茶アオトの電話が鳴った。


店に電話がかかってくることは、ほとんどない。


予約制ではないし、席が埋まるほど混むこともない。


迷った人が場所を尋ねてくるか、酔った誰かが番号を押し間違えるくらいだ。


「はい、喫茶アオトです」


電話の向こうからは、何も聞こえなかった。


ただ、街の音だけがしている。


車が通り過ぎる音。

信号機の電子音。

遠くで誰かが笑う声。


「もしもし」


しばらくして、女性の声がした。


「あの」


「はい」


「まだ、開いてますか」


「始発まで開いています」


「今から行ってもいいですか」


「もちろんです」


「……泣かなくても、入れますか」


俺は少しだけ間を置いた。


「喫茶店なので、泣くかどうかは自由ですよ」


電話の向こうで、小さく息を吐く音がした。


「よかった」


通話はそこで切れた。


彼女が来たのは、それから十五分ほど後だった。


扉のベルが鳴る。


入ってきた女性は、紺色のコートを着ていた。


髪も服もきちんとしていて、化粧も崩れていない。


泣いていたようには見えなかった。


むしろ、泣かないためにすべてを整えてきたように見えた。


「先ほどのお電話の方ですか」


「はい。すみません、急に」


「いらっしゃいませ」


彼女は店内を見回し、カウンターの真ん中に座った。


「何か温かいものをお願いします」


「コーヒーと紅茶、どちらがいいですか」


「紅茶で」


「ストレートにしますか」


彼女は少し考えた。


「甘いミルクティーにしてください」


俺は鍋にミルクを入れた。


弱い火にかけながら、茶葉を量る。


彼女はスマートフォンをカウンターに置いた。


画面は下向きだった。


それでも、何度も指先で触れている。


裏返そうとして、やめる。


電源を切ろうとして、やめる。


連絡を待っている人の仕草ではなかった。


連絡が来ないことを、何度も確かめている人の仕草だった。


「熱いので、気をつけてください」


カップを置く。


ミルクティーの表面から、白い湯気が立った。


彼女はカップに触れずに言った。


「今日、別れたんです」


「そうでしたか」


「五年、付き合っていました」


俺は何も言わず、続きを待った。


「結婚すると思ってたんです。ちゃんと約束したわけじゃないけど、五年も一緒にいたら、普通そう思いますよね」


「そう思うと思います」


「でも彼、来月結婚するんですって」


彼女は笑った。


乾いた、上手な笑い方だった。


「私じゃない人と」


ミルクティーの湯気が、彼女の顔の前でゆっくり消えていく。


「二年くらい前から、他にも付き合っている人がいたみたいです。そっちの人が妊娠したから、結婚するって」


「今日、聞いたんですか」


「はい」


「直接?」


「メッセージで」


彼女は伏せていたスマートフォンを裏返した。


画面には、短い文章が表示されていた。


謝っているようにも、言い訳しているようにも見える文面。


彼女はすぐに、また画面を伏せた。


「会って話したいって送ったんです。でも、返事がない」


「はい」


「電話も出ない」


「はい」


「たぶん今、向こうの人と一緒なんですよね」


彼女はようやくカップを持ち上げた。


一口飲む。


「甘い」


「甘すぎましたか」


「いいえ」


彼女はまた笑った。


「私、今日は泣くつもりだったんです」


「電話でも言っていましたね」


「家に帰ったら泣こうと思って。お風呂に入って、化粧を落として、思い切り泣こうって」


「泣けませんでしたか」


「一滴も」


彼女は自分の目元を指で触った。


「ショックが大きすぎると、涙って出ないんですかね」


「そういうこともあると思います」


「それとも、そんなに好きじゃなかったのかな」


その言葉だけ、少し声が揺れた。


俺はカウンターの内側から、小さな蜂蜜の瓶を出した。


「もう甘いです」


「これは飲み物用じゃありません」


「何に使うんですか」


「今、考えます」


彼女が少しだけ笑った。


俺は小皿に蜂蜜を垂らし、スプーンを添えた。


「悲しいかどうかを、涙で決めなくてもいいと思います」


彼女は蜂蜜の皿を見る。


「でも、泣けないと実感がないんです」


「五年一緒にいた人に裏切られて、それでも店まで来て、甘いミルクティーを頼んで、連絡が来ていないか何度も確認している」


俺は彼女を見る。


「十分、悲しんでいるように見えます」


彼女は何も言わなかった。


「涙は、悲しみの証明書じゃないですよ」


店の時計が、一度だけ小さく鳴った。


彼女はミルクティーを見つめたまま言った。


「友達には、まだ言ってないんです」


「どうしてですか」


「みんな、前から彼のこと嫌ってたから」


「そうなんですね」


「言ったら絶対、『だから言ったじゃん』って言われる」


「それは今、聞きたくないですね」


「聞きたくないです」


「ご家族には?」


「言えません。母は彼との結婚を楽しみにしてたから」


「職場の人は?」


「明日も普通に仕事です」


彼女は指を折りながら数えた。


「だから、誰にも言えなくて」


それから、困ったように笑う。


「五年付き合ってたのに、別れたことを話せる人がいないって、変ですよね」


「変ではないですよ」


「寂しいです」


その言葉は、とても小さかった。


泣いてはいなかった。


でも、その夜初めて、彼女は笑わずに話した。


「寂しいですね」


俺がそう答えると、彼女は顔を上げた。


「励まさないんですか」


「励ましてほしいですか」


「わかりません」


「じゃあ、今はやめておきます」


「次はもっといい人がいるとか」


「今、聞きたいですか」


「聞きたくないです」


「五年が無駄じゃなかったとか」


「それも嫌です」


「彼より幸せになって見返そうとか」


「一番嫌です」


「承知しました」


彼女は少し声を出して笑った。


「何も言わないんですね」


「何も言わないほうがいい夜もあります」


俺はミルクティーのおかわりを鍋に入れた。


「今夜は、彼を許さなくていいし、自分を反省しなくてもいい。次の恋を考えなくてもいい」


ミルクを温める音が、小さく店内に広がる。


「ただ、嫌だったって言っていい夜です」


彼女はしばらく黙っていた。


そして、少し強い声で言った。


「嫌でした」


「はい」


「ずっと私だけだと思ってた」


「はい」


「仕事が忙しいって言われたから、会いたいのも我慢した」


「はい」


「重いと思われたくなくて、寂しいって言わなかった」


「はい」


「私の誕生日、忘れてたくせに。向こうの人の誕生日には旅行に行ってた」


「それは嫌ですね」


「嫌です」


彼女はカウンターを見つめた。


「結婚するなら、せめて私と別れてからにしてほしかった」


「本当にそう思います」


「最後くらい、会って謝ってほしかった」


「はい」


「私が傷つくのが面倒だから、メッセージだけで終わらせたんです」


「卑怯ですね」


彼女が俺を見る。


「言っていいんですか、そんなこと」


「俺は彼を知りません。でも、今聞いた話については、そう思います」


彼女の顔が、少しずつ崩れた。


それでも、涙は出なかった。


代わりに、唇が震えた。


「私、怒ってたんですね」


「悲しいだけではなかったんですね」


「ずっと、悲しまなきゃって思ってた」


「怒ってもいいと思います」


「でも五年も好きだった人を、悪く言ったら」


「好きだったことと、傷つけられたことは、別にしていいですよ」


彼女は両手で顔を覆った。


泣いているように見えた。


でも、手を下ろした目元は乾いたままだった。


「やっぱり出ない」


「何がですか」


「涙」


「今夜は出ない日なのかもしれません」


「それでもいいですか」


「もちろん」


俺は二杯目のミルクティーを置いた。


彼女は今度はすぐに口をつけた。


「さっきより甘くない」


「同じ量です」


「じゃあ、私が変わったんですね」


「少し苦いことを言えたからかもしれません」


彼女はゆっくり飲んだ。


しばらくして、スマートフォンが振動した。


彼女の肩が動く。


画面を見る。


数秒だけ眺めたあと、スマートフォンを伏せた。


「彼ですか」


「はい」


「何て?」


「『もう連絡しないでほしい』って」


俺は返す言葉を探した。


でも、彼女は静かだった。


「返事をしますか」


「しません」


「決めたんですか」


「今、決めました」


彼女はスマートフォンの電源を切った。


そして、カウンターの端に置いた。


「これで終わりです」


その声には、強さよりも疲れがあった。


終わらせられた人ではなく、ようやく終わったことを認めた人の声だった。


「寂しくなりますね」


「はい」


「明日、つらいかもしれません」


「はい」


「来週も、まだ好きかもしれません」


「……はい」


「それでもいいと思います」


彼女は少し目を細めた。


「ここでは、何でもいいって言うんですね」


「何でも、ではありません」


「違うんですか」


「あなたを傷つけること以外なら」


その瞬間だった。


彼女の目から、ようやく一粒だけ涙が落ちた。


頬を伝い、カウンターの上に落ちる。


彼女は驚いたように、自分の頬に触れた。


「出ました」


「出ましたね」


「なんで今なんでしょう」


「安心したのかもしれません」


「何に?」


「泣けなくてもいいと言われたことに」


彼女は笑いながら、次々と涙をこぼした。


「変ですね」


「変じゃないですよ」


「さっきまで、一滴も出なかったのに」


「涙も急かされるのが苦手なんでしょう」


俺は紙ナプキンの箱を近づけた。


彼女は一枚取り、目元を押さえた。


「化粧、ひどいですか」


「少しだけ」


「正直ですね」


「鏡は見ないほうがいいです」


「そんなに?」


「今夜は、見た目を気にしなくていい日です」


彼女は泣きながら笑った。


そのあとは、ほとんど話さなかった。


彼女は静かに泣き、俺は何度かミルクティーを温め直した。


涙が止まったころ、窓の外が少し青くなっていた。


始発が動き出す時間だった。


彼女は化粧室で顔を整え、店を出る前に振り返った。


「次に来たときも、ミルクティーにします」


「甘めにしますか」


「今日より少しだけ控えめで」


「少し元気になったということですか」


彼女は考えてから、首を振った。


「苦いものも、ちゃんと味わえるようになりたいから」


「わかりました」


「でも、しばらくは甘くしてください」


「もちろんです」


扉のベルが鳴る。


彼女は朝の街へ歩いていった。


カウンターには、空になったカップが二つ。


伏せられたまま忘れられたスマートフォンは、もうなかった。


俺はカップを洗いながら思った。


泣けない夜がある。


泣かなければいけないと思うほど、涙が遠ざかる夜がある。


悲しみ方には、正解がない。


怒ってもいい。

黙っていてもいい。

まだ好きでもいい。

忘れられなくてもいい。


涙は、出たくなったときに出ればいい。


深夜喫茶アオトは、今夜も始発まで開いています。


泣けない夜に、どうぞ。

蒼人

【深夜喫茶アオト】第二夜 強がりブレンド

※これは完全なフィクションの短編小説です。

実在のお客様・店舗・出来事とは関係ありません。

眠れない夜に、少しだけ読んでもらえたら嬉しいです。


深夜喫茶アオト

第二夜 強がりブレンド


雨の夜は、喫茶アオトの扉が重くなる。


湿った木が膨らんで、いつもより少し強く引かないと開かない。


午前零時を二十分ほど過ぎたころ。


扉の向こうで、誰かが二度、取っ手を引いた。


三度目にようやく扉が開き、ベルが大きく鳴った。


「すみません」


入ってきた女性は、店に謝った。


肩まで濡れたベージュのコート。

片手には折り畳み傘。

もう片方の手には、仕事用らしい黒い鞄を抱えている。


「いらっしゃいませ」


俺がタオルを差し出すと、彼女はすぐに首を振った。


「大丈夫です」


一回目。


「コート、お預かりします」


「そのままで大丈夫です」


二回目。


「こちらの席、暖房が近いですよ」


「どこでも大丈夫です」


三回目。


彼女はカウンターのいちばん端に座り、濡れた髪を耳にかけた。


「何にしますか」


「一番苦いコーヒーをください」


「眠気覚ましですか?」


「いえ」


彼女は鞄を膝の上に置いたまま答えた。


「苦いものを飲みたい気分なだけです」


俺は深煎りの豆を挽いた。


静かな店内に、豆を砕く音が響く。


彼女はスマートフォンを伏せて置いた。

けれど、画面が光るたびに目を向けていた。


誰かからの連絡を待っているのか。

それとも、来てほしくない連絡を警戒しているのか。


深夜のカウンターでは、どちらもよく似た顔になる。


コーヒーを置く。


その隣に、角砂糖を三つ並べた。


彼女が眉を上げた。


「ブラックで飲みます」


「これは、さっきの分です」


「さっきの分?」


「大丈夫って、三回言ったので」


彼女はしばらく角砂糖を見つめた。


「言いました?」


「言いました」


「無意識でした」


「四回目ですね」


俺は角砂糖をもう一つ加えた。


彼女は呆れた顔をして、それから小さく笑った。


「変な店」


「よく言われます」


「大丈夫って言うたびに、砂糖が増えるんですか」


「今夜だけのルールです」


「このままだと飲めないくらい甘くなりますね」


「それくらい言っているということです」


彼女はコーヒーカップに口をつけた。


苦かったのだろう。

ほんの少しだけ顔をしかめた。


それでも、砂糖には手を伸ばさない。


「お仕事帰りですか」


「はい」


「遅くまでお疲れさまです」


「慣れているので、大丈——」


彼女は途中で言葉を止めた。


俺は角砂糖の入った容器に手を伸ばす。


「今のは最後まで言ってません」


「危なかったですね」


「見張られてるみたい」


「今夜だけです」


彼女はまた笑った。


最初に店へ入ってきたときより、呼吸が少し深くなっていた。


「今日、部下に泣かれたんです」


突然、彼女が言った。


俺は何も聞かず、続きを待った。


「仕事で失敗した子がいて。私がフォローしたんですけど、その子が『迷惑ばかりかけてすみません』って泣いてしまって」


「はい」


「だから、言ったんです。『大丈夫。私に任せて』って」


彼女はカップの中を見た。


「そのあと上司から電話があって、『君なら一人でも大丈夫だよね』って、別の仕事も回されました」


俺は角砂糖を一つ、皿の上に置いた。


彼女はそれを見て、苦笑した。


「それも数えるんですか」


「あなたが言ったわけではありませんが、同じ言葉なので」


「じゃあ、それもお願いします」


彼女が自分で、もう一つ角砂糖を加えた。


「母からも電話がありました。父の通院のことで。『あなたは昔からしっかりしてるから大丈夫よね』って」


三つ目を置く。


「弟からは、『姉ちゃんに任せておけば大丈夫』」


四つ目。


「友達には、『あなたは強いから大丈夫』」


五つ目。


白い角砂糖が、皿の上に小さな塔を作った。


彼女はそれを眺めながら言った。


「便利ですよね、私」


声は笑っていた。


でも、指先はカップの取っ手を強く握っていた。


「みんな、私に大丈夫って言えば、自分が安心できるんです」


俺は何も答えなかった。


「頼られるのは嫌いじゃないんです。本当に。仕事もできないより、できたほうがいい。家族の役に立てるのも嬉しい」


「はい」


「でも、ときどき思うんです」


彼女はそこで言葉を切った。


スマートフォンの画面が光った。


彼女は見なかった。


「私は、誰に大丈夫じゃないって言えばいいんだろうって」


外で、雨の音が強くなった。


窓を叩く雨粒が、しばらく彼女の代わりに話していた。


俺は小さなミルクピッチャーを温め、カウンターに置いた。


「ブラックで飲むって言いました」


「知っています」


「じゃあ、これは?」


「苦すぎたときのためです」


「これを入れたら、負けたみたいで嫌です」


「苦さを薄めても、今日頑張ったことまで薄くなりませんよ」


彼女が俺を見る。


「そういうこと、平気で言うんですね」


「喫茶店なので」


「関係あります?」


「深夜喫茶なので」


彼女は息を漏らして笑った。


そして、ミルクピッチャーを手に取った。


黒いコーヒーの中に、白いミルクが静かに落ちる。


一度沈み、ゆっくり広がり、二つの色の境目がなくなっていく。


彼女はスプーンで一度だけ混ぜた。


今度は顔をしかめずに飲んだ。


「おいしい」


「よかったです」


「最初からこっちにすればよかった」


「最初に苦いのを選んだから、わかったことかもしれません」


「何がですか」


「今夜は、苦くなくてもいいってことです」


彼女はカップを両手で包んだ。


しばらくして、ぽつりと言った。


「本当は今日、誰かに迎えに来てほしかったんです」


俺は彼女を見る。


「残業が終わったら、駅の前に誰かがいて。『お疲れ』って言って、鞄を持ってくれて。何があったか聞かずに、一緒に帰ってくれたらいいのにって」


「はい」


「でも、そんな人いないから」


また「大丈夫」と続けそうになって、彼女は口を閉じた。


俺は手を差し出した。


「鞄、お預かりします」


「え?」


「帰るまでの間だけ」


彼女は膝の上の黒い鞄を見る。


店に入ってから一度も離さなかった、重そうな鞄。


「中にパソコンが入ってます」


「丁寧に扱います」


「資料も入ってます」


「見ません」


「結構、重いですよ」


「持てます」


彼女は迷ったあと、鞄を俺に渡した。


それをカウンターの内側に置く。


たったそれだけなのに、彼女の肩が目に見えて下がった。


「軽い」


彼女が言った。


「鞄ですか?」


「私が」


その声は少し震えていた。


俺は気づかないふりをして、コーヒーのおかわりを用意した。


泣きそうな人に「泣いていい」と言うのは、ときどき乱暴だ。


涙には、その人自身のタイミングがある。


だから俺は、ただ尋ねた。


「今日は、大丈夫じゃなくても困る人はいませんか」


彼女は首をかしげた。


「ここには、俺しかいません」


「あなたが困るでしょう」


「困りません」


「面倒じゃないですか」


「お客様がコーヒーを飲んでいるだけですから」


「でも、もし泣いたら」


「ナプキンは多めにあります」


彼女の目から、一滴だけ涙が落ちた。


すぐに拭こうとしたので、俺は紙ナプキンの箱をそっと近づけた。


「一枚で大丈夫です」


彼女はそう言って、止まった。


俺は角砂糖の容器に手をかける。


「それも数えるんですか」


「どうしましょう」


「今のは……取り消します」


「承知しました」


彼女は泣きながら笑った。


泣き声を押し殺すような静かな涙だった。


きっと今までも、ひとりになってから泣く人だったのだろう。


誰かに心配をかけないように。

誰かの予定を乱さないように。

誰かが安心して彼女を頼れるように。


強い人というのは、壊れない人ではない。


壊れたことに気づかれない速さで、自分を直してしまう人だ。


けれど、毎回ひとりで直さなくてもいい。


少なくとも、今夜くらいは。


雨が弱くなったころ、彼女は席を立った。


目元は少し赤かったけれど、入ってきたときより表情は柔らかかった。


俺は預かっていた鞄を渡す。


「やっぱり重いですね」


彼女が言う。


「何が入っているんですか」


「仕事と、責任と、期待です」


「それは重いですね」


「あと、化粧ポーチ」


「それが一番重そうです」


「失礼ですね」


彼女は笑って、鞄を肩にかけた。


扉の前まで行ってから、振り返る。


「このコーヒー、名前はあるんですか」


「今、つけてもいいですか」


「どうぞ」


「強がりブレンド」


「そのままですね」


「わかりやすいほうがいいかと」


「次に来たときも、頼めます?」


「もちろん」


「今度は最初からミルクをください」


「砂糖は?」


彼女はカウンターの上に残った角砂糖の塔を見た。


「その日の“大丈夫”の回数で」


「かなり甘くなるかもしれません」


「そのときは、半分飲むのを手伝ってください」


俺は笑った。


「はい。喜んで」


扉のベルが鳴る。


彼女は雨上がりの路地へ歩いていった。


カウンターには、飲み終えたカップと、使われなかった角砂糖が残っている。


俺は白い塔を一つずつ崩しながら思った。


「大丈夫」は、優しい言葉だ。


けれど、ときどきそれは、強い人をひとりにする。


だから、喫茶アオトでは聞くことにしている。


本当に大丈夫ですか、と。


答えが「大丈夫じゃない」でも、何も困らない。


深夜喫茶アオトは、今夜も始発まで開いています。


強がるのに疲れた夜に、どうぞ。

蒼人

【深夜喫茶アオト】第一夜 誕生日のショートケーキ

※これは完全なフィクションの短編小説です。

実在のお客様・店舗・出来事とは関係ありません。

眠れない夜に、少しだけ読んでもらえたら嬉しいです。


【深夜喫茶アオト】第一夜 誕生日のショートケーキ


深夜二十三時になると、喫茶アオトの看板に灯りが入る。

昼間は誰にも見つからないような細い路地の奥。

古いビルの二階。

階段を上がると、木の扉に小さな真鍮の札がかかっている。

《深夜喫茶アオト》

営業時間は、二十三時から始発まで。

メニューは少ない。

珈琲。

紅茶。

ミルクティー。

それから、眠れない人のための甘いものを少し。

その夜、最初のお客様は、日付が変わる少し前にやってきた。

扉のベルが、ちいさく鳴る。

「いらっしゃいませ」

俺が声をかけると、彼女は少し驚いたように顔を上げた。

黒いコート。

きれいに巻かれた髪。

でも、目元だけが少し疲れている。

きっと今日一日、誰にも疲れていると気づかれないようにしていた人だと思った。

「まだ、やってますか」

「もちろん」

「よかった」

彼女はそう言って、カウンターのいちばん端に座った。

深夜の喫茶店では、最初からたくさん話す人は少ない。

みんな、言葉を持って来るまでに少し時間がかかる。

だから俺は、急かさない。

「温かいものにしますか」

「はい。甘いのがいいです」

「じゃあ、ミルクティーにしましょう」

湯気の立つカップを置くと、彼女は両手で包むように持った。

爪はきれいに塗られていた。

誰かに見せるためというより、自分を崩さないための色に見えた。

しばらくして、彼女が小さく言った。

「今日、誕生日なんです」

「おめでとうございます」

俺がそう言うと、彼女は笑った。

でもそれは、嬉しい笑い方じゃなかった。

「ありがとうございます。今日、初めて言われました」

その一言で、店の中の時計の音が少し大きくなった気がした。

「誰にも?」

「はい。職場では言ってないので。家族からは昼にスタンプだけ。友達には、なんか今さら自分から言うのも変で」

彼女はカップの中を見つめた。

「大人になると、誕生日って、扱いに困りませんか」

「わかります」

「祝ってほしいって言うほど子どもじゃない。でも、何もないと、少しだけ寂しい」

「子どもじゃなくても、祝われたい日はありますよ」

彼女はその言葉に、少しだけ目を伏せた。

俺は冷蔵ケースから、小さなショートケーキを出した。

閉店前に残っていた、いちごがひとつ乗ったケーキ。

皿に移して、細いろうそくを一本立てる。

「え」

「よかったら」

「そんな、悪いです」

「今日のために残ってたことにしましょう」

「そんな都合のいいことあります?」

「深夜喫茶なので」

彼女が初めて、少し本当に笑った。

ライターで火をつける。

小さな炎が、彼女の瞳の中で揺れた。

「お名前、聞いてもいいですか」

彼女は少し迷ってから、自分の名前を教えてくれた。

俺はその名前を、できるだけ丁寧に呼んだ。

「お誕生日おめでとうございます」

その瞬間、彼女の唇が少しだけ震えた。

泣かないようにしている人の顔だった。

泣きたいのに、まだ泣く許可を自分に出せていない人の顔。

俺は何も言わなかった。

慰めるのが早すぎると、涙は戻ってしまうことがある。

だから、ただケーキ用のフォークを置いた。

「願いごと、しますか」

「今さらですか」

「今からでも」

彼女はろうそくを見つめた。

「じゃあ……来年の誕生日は、もう少し自分を雑に扱わないようにしたいです」

「いい願いですね」

「願いっていうか、反省ですね」

「反省でも、願いにしていいと思います」

彼女は小さく息を吸って、ろうそくの火を吹き消した。

ふっと暗くなって、すぐに店の灯りが戻る。

たったそれだけのことなのに、彼女は少しだけ別人みたいに見えた。

誰にも祝われなかった一日が、最後の最後で、ちゃんと誕生日になったような顔だった。

ケーキを一口食べて、彼女は言った。

「甘い」

「甘すぎました?」

「いえ。今日くらい、甘くていいです」

それから彼女は、仕事のことを少し話した。

最近、笑い方が上手くなりすぎたこと。

頼られるのは嫌いじゃないけど、ときどき誰かに頼りたくなること。

誕生日なのに、自分で自分に何も買わなかったこと。

俺は相槌を打ちながら、ミルクティーを注ぎ足した。

深夜の喫茶店でできることは、多くない。

過去は変えられない。

明日の仕事を代わることもできない。

寂しさを全部消すこともできない。

でも、ひとつだけできることがある。

その人が自分を雑に扱いそうになった夜に、

「今日はそれをしなくていい」と伝えること。

彼女が帰るころ、外はまだ暗かった。

「また来てもいいですか」

扉の前で、彼女が聞いた。

「もちろん」

「誕生日じゃなくても?」

「誕生日じゃない日のほうが、多いですから」

彼女は笑った。

今度は、少しだけ軽い笑い方だった。

「じゃあ、また眠れない日に」

「はい。眠れない日に」

扉のベルが鳴って、彼女は夜の路地へ戻っていった。

カウンターには、空になったカップと、ケーキ皿と、短くなったろうそくが一本。

俺はそれを片づけながら思った。

大人になると、誰かに祝ってほしいと言えない夜がある。

甘えたいと言えない夜がある。

寂しいと認めるだけで、負けた気がする夜がある。

でも本当は、たぶん逆だ。

ちゃんと寂しいと言える人は、まだ自分を諦めていない。

深夜喫茶アオトは、今夜も始発まで開いています。

眠れない夜に、どうぞ。

リョウ

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リョウです。

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